貴一君は、利発で、真面目で、おとなしく、人が嫌がることは決してしない優しい子でした。
字は極めて丁寧に書き、よく本も読んでいる子供でした。
学校での成績も結構良い方でした。
体育だけは嫌いではありませんでしたが、得意ではなかったようです。
貴一君のお母さんも物静かで、寸子が一番大嫌いな、いつでもママ友連中と吊るんで、という事はしない、
長時間のフルタイムで働いている、
それでいて
「私はバリバリに稼いでいるのよ。」
という匂いを感じさせない、
そして保護者会などで意見を言う時も必ず相手の立場も考慮しながら静かに発言する方でした。
寸子は近所の人や、子供の小学校時代のお母さん連中とは挨拶程度の世間話くらいはしても、特別に親しくなる事は意識的に避けていますが、このお母さんとは本音で子供の悩みや家庭のグチなどを話せそうな気がします。
ただ、交流は持ってはいませんが。
それなのに貴一君が小学3年生の時から不登校ぎみとなりました。
理由は学級崩壊でした。
息子が小学校に入学し、近所の同学年のガキとクラスも分かれ、1〜2年生の時には平穏無事に過ごしながら、クラス替えにより今度は学校内でいじめに遭うようになったのもこの同じクラスで、同じく3年生からです。
貴一君自身はいじめにあった訳ではありませんでしたが、性格がこのような子であるために、
毎日教室内外のどこかで集団暴行によって泣かされている子達、
先生やクラスの子に対して罵倒を吐いている子達、
授業中であってもギャーギャー騒ぐ子達、
この野蛮な雰囲気に子供ながらも嫌悪感すら覚えるようになってしまったのです。
学年が上がってクラス替えがあっても、担任が変っても、学校を欠席する日が多くなりました。
お母さんの話によると、学校に行こうとすると腹痛、下痢、頭痛、吐き気という症状が出るのだそうです。
ご両親は子供カウンセラーに相談に行ったり、お母さんは子供心理学なんかの類の書籍など多く読んでみたりと必死でした。
長時間のフルタイムで働きながら、仕事中でも気になって心が休まる時はなかったのではとお察しします。
そんな中で息子自身は片手にさえも余る、数人もいない友達の中で、欠席が多く学校に来ない日が多い、この貴一君と遊んだり、おしゃべりする時が一番楽しく、嬉しかったようです。
息子は貴一君が学校に来た日は学校から帰って来てからも1日明るい顔でした。
貴一君も息子の事は好いてくれました。
登校出来た日は学校から帰って来て、貴一君の家か我が家でいつも二人で遊んでいました。
学校が夏休みや冬休みに入ると必ず年賀状や暑中見舞もくれて、家族旅行に行った時はキーホルダーなどのお土産もくれたりしました。
日曜日などは貴一君と二人で自転車で遠出したり、お小遣いでカードを買いに行ったりもしました。
貴一君のご両親は不登校の貴一君を中学受験させました。
受験に踏み切った理由はここでも寸子と全く同じでした。
学校を休みがちという事もあって、家庭教師で乗り切りました。
現在、東京都内ではありますが自然環境の整った私立の中高一貫校に通っています。
貴一君家族が選んだこの学校名を聞かされた時、ご両親の貴一君が不登校になってから卒業するまでの葛藤と、貴一君に対する何にも勝る親心を切々と痛感しました。
中学入試が終わり、一応担任に報告のため寸子も一緒に登校すると一足先に終わった貴一君も学校に来ていました。
貴一「終わった?」
息子「うん、終わった。」
貴一「決まった?」
息子「うん、決まった。」
貴一「じゃ、今日遊べる?」
息子「うん、おもいっきり遊ぼう。」
貴一「うん、おもいっきりゲームとカードやろう。」
息子「うん、おもいっきりゲームとカードやろう、ママ、いいよね!」
寸子「うん、おもいっきりやりな!」
息子「うん、じゃ、ボクんちでやろう。」
学校が終わり家に帰ってゲーム機とカードを持って我が家にやって来ました。
久しぶりに見た貴一君は身体も大きくなっていました。
息子と同じく変声期にも入っていました。
お菓子やジュースを出してあげても二人で黙々と、そして楽しそうにやっていました。
最近はありませんが、昨年までは貴一君のお母さんとはよく近所のスーパーでばったり会いました。
運動が苦手だった貴一君ですが中学の部活は運動部を選び、学校が楽しくてたまらないようでした。
お母さん曰く、
「小学校時代に毎朝暗い顔をして家を出て行ったのが嘘のよう」だと。
貴一君とは入学した1年生から同じクラスでした。
今日、この貴一君の話を書いた一番の目的は、
不登校になる原因は一概に、いじめに遭った時や教師との関係が気まずくなったときだけではない、
ということです。
卒業式。
式が終わり拍手の中、担任を先頭に卒業生が一列に並んで、保護者席の前を通って退場する時でした。
貴一君が寸子の前を通る時、寸子と目と目が合って、少しはにかみながら、ペコッと、寸子と貴一君にしか分からない程の小さな会釈をしてくれて、そして寸子はその何倍の深さでゆっくり返しながら、息子が通った時には出なかった涙がこぼれ落ちました。
貴一君、よく頑張ったね。
そして有難う。
貴一君がいてくれたから息子も今日この学校で卒業式が出来たのかもしれないね。
中学に行ったら今までの分を取り戻すくらいの気持ちで精一杯学校生活を謳歌するんだよ。
本当に有難う。
息子の友達でいてくれて。
卒業式に写した写真が何枚かあります。
壇上で校長から卒業証書を授与されている写真
袴を着た担任と二人で撮った写真
「第◎×回 荒川区立△◆小学校卒業式 」と書かれた衝立の前で寸子と二人で撮った写真
その他数人の級友と撮った写真
でも、卒業式が終わって校門の前で貴一君と二人だけで互いに卒業証書を片手に持って写した、この写真が寸子は一番好きです。
追記
今日で「いじめ」のテーマは終わりました。
独身の方やお子さんがいらっしゃらない読者さん達には11日間は少々長く、飽きさせてしまったかもしれません。
この記事を書き終えた日、偶然にも息子は朝の登校中に貴一君とバッタリ会ったそうです。
ほぼ一年ぶりです。
夏休みに入ったら二人でどこかに遊びに行く約束をしたそうです。
「どこに行こうかな〜?」と息子が言っております。
もう少し年齢が高ければ
「女の子をナンパしにでも行ってくれば?」
と言いたいところですが。
【いじめの最新記事】



いつだったかランキングから飛んできて以来、スカッと男前な寸子さんのファンになり毎日更新を楽しみにしております42歳の働く主婦です。
いじめについての一連の記事、年少の一人息子を持つ身として、時には怒りに震えながら、また時にはうるうると涙目になりながら、しっかりしっかり読ませていただきました。読み応えありました。ヘタな育児本よりずっとずっと心に響いてきました!
もしこれから何かあって、親のワタシがアクションを起こさねばならなくなった時に、寸子さんの書いて下さった記事が指針になると思います。
鬱陶しい季節ですが、体調を崩しませんようご自愛くださいませ。これからも更新楽しみにしております。
コメント有難うございます。
昨日の段階できよみ〜様からコメントが入っている事は確認しておりましたが、今日の記事でお解りの頂いたと思いますが、ブログの閉鎖を決めておりまして、しかも前日のコメント。
とても嬉しく有り難く、そして「更新を楽しみにしております。」とのお言葉には大変申し訳なく、今日の記事をアップするまでの少しの時間、コメントのお返事を遅らせました。
この「いじめ」のテーマを書き上げて更新するまではブログの閉鎖はしないと決めておりました。
そして書き終えました。
記事にも書きましたが、自分としましては万感の思いで書きまして、感無量ではありますが、はたして読者さんにはどのように届いたのか?
そんな中できよみ〜さんのコメント、
昨日は胸が躍りました。
初日に書きましたが、どの教育本や教育者も決してクチが避けても書かない、言わない事を厳選しましたが、きよみ〜さんがそこをきちんと捉えて読んで下さった事、
届いた!と確信がもてました。
年少のお子様がいるようですが、いつ、何歳で、何が理由でいじめや仲間はずれに遭うかは本当にわかりません。
言いたい事は11日間で書きましたが、とにかくお子様が友達と遊んでいる姿をしっかり観察して下さい。
今後はコメント欄へのお返事は控えますが、何か聞きたい事などありましたら、何年たっても遠慮せずに、右サイドバーにありますメッセージで下さい。
今日まで寸子のブログを読んでいただきまして本当に有難うございました。
きよみ〜様の健康と、きよみ〜様のお子さんの健やかな成長をお祈りいたします。